死んだ男の名は大蔵重进といい、ここ都の徴税役人の取りまとめの一人であった。その徴税の仕方が度を超えて苛烈であり、庶民もまた商人连中も困っているとのことで、谁かその上役が、闇の仕事を依頼したのだ。税吏の取りまとめといっても、下っ端である。死んだことでお上が揺らぐことはない。
雾生の里から依頼が伝えられたお瑶は、その担当として重进暗杀の刺客の仕事を任されたのである。
その任务はくノ一であるお瑶にとっては容易なものだった。
芸妓の姿を取ったお瑶は、重进の驯染みの店に潜入し、忽ち彼の気に入りとなった。酌をする际に、男に手を握られたり、肩を抱かれて引き寄せられたり、果ては着物の裾から手を入れられ、腿を抚でられるようになっていった。始めは耻じらいの仕草と共に、小さく拒んでいたが、次第に妖しい瞳で痴态を働く男を见つめ返し、その手を握り返すなど反応を変えていった。そうやって男の警戒心を解き、更には心理を掴むのだ。
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それらもまたお瑶の目论见通りなのである。
重进はお瑶を床に诱おうとしたが、しかしそれだけにはお瑶は中々応じず、重进をやきもきさせた。
「侬の言うことが闻けんのかっ」
酔った势いで重进はそう激高したこともあったが、しかしつれない仕草と妖艶な视线で、お瑶は男を丸め込んでしまう。それでも暴れて手がつけられなくなった时には、密かに急所秘孔を突き、一度失神させてしまうのだった。そうやって焦らせば焦らすほど、重进はお瑶の元へと通い诘めたのである。
そして今夜……。
「重进様、奥で床の用意が出来ておりまする」
したたか酔った男に、お瑶はそう嗫いたのだった。
男は一瞬きょとんとしたような表情を赤ら顔に浮かべ、次第に酔った头でもその意味することが分かったのか、いかにも好色そうな笑みを満面に広げると、
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「うむ」
と、一见重々しく颔いて、半ばお瑶に支えられながら奥座敷へと来たのだった。
それが自身の最期になるとも知らず……。
重进が通された奥座敷には、既に床が延べられており、枕元に酒と烟管の用意もしてあった。
ぴたりと障子が闭じられ、座敷は男女二人だけの影が浮かぶ。
男の酒臭い息が荒い。
「おお、侬は待ちわびたぞ」
酔った男はふらつく足取りで芸妓であるお瑶の方へと向かってくる。
「まあ、お顔が真っ赤ですよ。座って落ち着かれてはいかがですか」
お瑶はそう言ったが、その腕は急に掴まれ、强引に引き寄せられた。
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