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日文65545(67)


 そう言って司祭様は柔和に微笑む。
 僕は颔いた。

 この世界には、多数の神様がいて、その数だけの教义がある。
 だから、教会に个性があるのも不思议な事じゃない。
 でも、教坛も长椅子も无い教会というのは初めてだった。

「私达の神は、人々の自由意志を何よりも重要视しておられます。
 ですから、司祭が人々に一方的に説教するのではなく、こうして対话する形を取っているのですよ」
 なるほど、そういうことか。
 でも正直、教义にはあまり兴味は无い。
 早く祈りを捧げて、魔王城に向かわなくては。

「勇者様、何を急いでらっしゃるのですか?」
 兴味のなさそうな様子の僕に、司祭様は问いかける。

 当然、魔王を早く倒さなくてはならないからです。
 僕は答える。 nwxs5.cc

「なぜ、魔王を倒さなくてはならないのですか?」
 魔王が悪で、僕が勇者だからです。

「なぜ、勇者が魔王を倒さなくてはならないのですか?」
 勇者が魔王を倒すと、决められているからです。

 当たり前の事を闻く司祭様に、僕は苛立ちながら答える。

「……勇者様。
 人々は自身の意志に忠実に生きるべきなのです。
 どんな人间であろうと、他人に自身の生き方を决められることなど、あってはなりません」
 司祭様は僕の目をまっすぐ见据えて言う。

 そんな事は无い。
 勇者は魔王を倒さなくてはいけないんだ。

 司祭様の真剣な表情に気圧されながらも、僕は答える。

「それを决めたのは、谁ですか?」
 ……

 そう问われて初めて、その答を知らないことに気付いた。
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 勇者であることが分かってからずっと、魔王を倒すことが使命なのだと言われてきた。
 家族にも、周囲の人々にも、王にも。
 でも、それが何故なのか、考えたことも无かった。

「勇者様。
 勇者はどうやって决められたのか、知っていますか?」
 ……知らない。
 数年前、ある日突然、自分は勇者なのだと告げられた。
 家族も大喜びしてて、村の人达もお祭り騒ぎで。
 理由なんて闻ける雰囲気じゃなかったし、僕も夸らしさで一杯で闻く気も无かった。

「これをご覧下さい」
 司祭様は、僕に一枚の纸を差し出す。
 その纸には、多数の名前と、その横にはいくつかの数字が书かれていた。
 よく见ると僕の名前もあって、大きく丸が付けられている。

 ……なんだろう。何か嫌な予感がする。
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